アナログ金木犀

つれづれなるまままにつれづれする

天才アニメーター?久乃木愛

こんばんは。釘宮です。

この記事はSHIROBAKOアドベントカレンダー24日目 の記事です。

今回は新人アニメーター久乃木愛にフォーカスを当て、彼女の魅力を紹介したいと思います。

久乃木愛の役割

SHIROBAKOにはリアルっぽく描かれている(おそらくモデルがいる人)キャラクターとアニメっぽく描かれてるキャラクターがいます。

キャラクターデザインを担当した関口さん曰くこの二種類のキャラクターをうまく同じ絵にあてはめるに困難したといったような旨をどこかのインタビューで言っておりました。

今回フォーカスする久乃木愛は後者です。後者のキャラクターにはいわゆる名前のないモブキャラも含まれてますが、彼女にはしっかりと名前が与えらています。 前半には一回きりしかも静止画でのみの登場だった彼女が後半がっつりと存在感をあらわにしてきたのはなぜでしょうか。 アリアに希望をもたらすためにルーシーというキャラクターが生まれたように、そこには彼女のキャラクターとして役割があったと思うのです。今回はそこを邪推してみようと思います。

その前に軽く紹介

まずは彼女について紹介していきましょう。

外見的には、SHIROBAKOでは数少ないアホ毛の持ち主です。感情に従ってアホ毛が動きます。

彼女が初めて登場したのは第十二話 〈えくそだす・クリスマス〉でみんなが忘年会に行っているシーンでした。堂本さんと会話しているであろう静止画、声もなくBGMオンリーな初登場でした。

そして15話の 〈こんな絵でいいんですか〉にて初めのて作打ちで絵麻が付き添っているところからはしっかり声も発しており、以降は頻繁に登場するようになります。

"初めての作打ち" という言葉からもわかるように、 彼女は第三飛行少女隊から原画マンになりましたエクソダス時代では動画をやっております。

彼女の一番特徴的はやっぱり そのコミュ症っぷり でしょう。「あ!」や「う!」や「さっがっ!」など一文字二文字でしか言葉を発せず、視聴者によっては苦手な人もいたようです。

また設定資料集では 髪の毛を母親に切ってもらっている。 という一文が添えられています。おそらく実家暮らしなのでしょう。

久乃木愛の役割

前半の役割

彼女が登場してきてから初めの役割は「絵麻の成長の象徴」なのではないかと考えています。

去年のAdvent Calendarで述べてますが、前半12話での絵麻の焦りは尋常ではないです。

motida-japan.hatenablog.com

父親との期限付きの約束。そしてその期限を超えて数年経っても未だに食べていけると確信できない。そう言った中でのリテイク。

それもなんとか周りの協力や彼女自身の実力と成長のおかげで乗り越えることができました。

ここで考えて見ましょう。 もし久乃木愛がエクソダスの頃から原画マンだったら

絵麻に久乃木愛の面倒をみる余裕があったでしょうか?

後輩の悩みに応える時間があったでしょうか?

後輩の作打ちに一緒に付きそっていたでしょうか?

食べていけるかどうかの瀬戸際で切り詰めて生活している彼女が、実家でぬくぬく暮らしていてコミュニケーションも取れない後輩の面倒をみる余裕なんてなかったはずです。もし面倒を見れたとしても、相当のストレスになったでしょう。

だからこそ 久乃木愛 は後半からの登場なのだと、自分は邪推します。

成長した後であるからこそ、久乃木愛の面倒を問題なくみることができる 。彼女がいることによって絵麻ちゃんのその成長っぷり、余裕っぷりが際立っていくんです。

絵のことについて、「人に教える余裕」もでてきました。

(天使の笑顔かよ...)

後半の役割

後半からは絵麻の手から離れていく自走するシーンが目立ちました。後半以降の彼女のアニメの中での役割は、宮森の最終回の言葉を体現するものではないかと考えています。

「細いロウソクの火みたいなかもしれないけれど、その小さな火が次々に受け継がれて、永遠に消えることのない炎となって世界を照らすものじゃないかって」

杉江さんから小笠原さん、小笠原さんから井口さん、井口さんから絵麻、そして絵麻から久乃木愛へ。

絵麻が井口さんからもらい、絵麻が久乃木愛に渡す という 、バトンを絵麻が回していく様を表したかったのではないでしょうか。

それを表現するためには久乃木愛自身がただ頼るだけの後輩のままアニメが終わってしまってはダメで、しっかり手離れして成長していく必要があったはずです。

まさに、最後の方は久乃木愛自身の勉強熱心さ、そして彼女の成長にフォーカスされます。

初めの作打ちでは「あ」や「う」しか話すことができなかった彼女が、初めて一人で行った作打ちでは「これは下着...ですか?」という名言をたたきこみ、またその次の作打ちでは「風速何メートルですか?」となんだか絵に必要そうな良い質問をしています。

一番象徴的なシーン

最終話〈遠すぎた納品〉での一幕でした。

「このカット、誰?」

監督や脚本が唸るほどカットを書いたのは我らが久乃木愛でした。

ここなにがすごいかというと 動物のカット なんです。

井口さんにとってのもぐら、絵麻ちゃんにとっての猫と、 この師弟筋にとって初めての動物は鬼門 のように描かれてました。

(もしかしたら作中描かれてないだけで初めてでないかもですが、とはいえ第三飛行書状態で動物カットはそうそうないはず。)

その鬼門を物ともせず、むしろ監督陣営を唸らせるほどのクオリティ。 天才 なのかもしれません。

このシーンは普通に考えたら、ずかちゃんがようやく抜擢されて、そのシーンを友達の絵麻が他にも十分に作業があるにもかかわらず自ら立候補してルーシーのシーンを書いたという流れだったので、絵麻がクオリティ高いものを書いて監督陣営から絶賛されるというのが自然な流れじゃないですか?それなのにその流れをぶった切って久乃木愛は全てを持って行くわけです。最高ですね。

考えてみると、久乃木愛は絵麻と対比的な設定が多くあります。〈実家暮らし〉と〈つめつめな一人暮らし〉、〈初めての動物シーンで監督陣営に大絶賛〉と〈初めてのシーンで作監から「これはない」と言われる〉などなど...

そんな対比を物ともせずに、多少の嫉妬くらいあってもいいはずなのに

「褒められてるよ、久乃木さん」

と、我が子のように接する絵麻の成長っぷりよ。

その二つ〈絵麻の成長〉〈久乃木愛の成長でなりたつ次の世代への伝授〉がしっかり表現されたいいシーンでした。

まとめ

もしかしたらこれから先に、鬼門をものともしなかった久乃木愛ですし〈下からどんどん成長する久乃木愛によって焦る絵麻〉とう未来がありえそうです。

しかし、それでも〈久乃木愛が絵で迷い、例の公園に絵麻が連れていく〉シーンを想像しながらニヤニヤしておきます。

長文にお付き合いいただきありがとうございました。