SHRIOBAKOに見る仕事のリアルな非情さと信頼関係の話
こんにちは。この記事は SHIROBAKO Advent Calendar 24日目の記事になります。
本日はクリスマスイブですね。
はい。
さて今回はSHIROBAKOの主題のひとつである「働く」ということに触れてみたいと思います。ご存知の方が多いかもしれませんが、SHIROBAKOはP.A.Worksの 働く女の子シリーズの第二弾 にあたるものです。
SHIROBAKOの主題は「仕事として、仕事を通して何をやりたいか?」なのかなと自分は考えています。主人公みやもりは「私は何をしたいんだろう、私には何ができるんだろう」と常に自問していますね。
この主題取り上げるためにはたとえアニメだとしても、仕事というものをリアルに描画しなければなりません。そのためSHIROBAKOでは正直引くほどにリアルです。
逆にファンタジーであるところはわかりやすいくらいファンタジーさを出しており、一層リアルなところのリアルさが深まっています。
妄想ですが、働く女の子とシリーズ第二弾をつくるとなったときに、
「仕事を題材にするんだから、自分たちが一番知ってるアニメ業界のことをとりあげよう」
「リアルさを追求するために、リアルにいる人たちをモデルにしよう」
みたいな会話があったのかなと。
ということで、再三になりますがSHIROBAKOではセリフや環境がちょっと非情すぎない?と思うくらい リアル です。
今回はSHIROBAKOを通してみた仕事における 非情さ と 信頼関係 の二つに焦点を当ててみたいと思います。
SHIROBAKOでは結構辛辣と言ってもいいセリフがたくさんある
劇中ではリアルにしてもなかなかに辛辣だなと感じるセリフがたくさんあります。
第1話のタローがやらかして、原画を誰かに頼まないといけない場面。
本田「社内でなんとかできないですかね?橋本さんとか内田さんとか」
円 「うーんまだむりじゃね?」
本田「杉江さんは?」
円 「 萌えアニメなんてかけるわけねぇじゃん。ありえねぇってあの人。無理! 」
本田「安原さんとか」
円 「新人原画にはまだ無理だろ。勝負カットだぞ」
新人だけでなく、ベテランですらざっと切り捨てています。
次は第11話「原画売りの少女」の矢野さんのセリフです。
矢野「あのねぇ、自称原画マン というレベルの人ならそりゃいないでもないよ?でもそういう人にオファー出して困るのはだれだ?」
みやもりに「仕事のできない人間と組んでも、スケジュールが潰れる上に自分が苦しむだけだから、ちゃんとできる人を選びなさい」というようなことを教えているシーンです。 自称原画マン というなかなかきついキーワードです。(そういう矢野さんが大好きです)
お次は第20話「頑張りマスタング」の円さんと平岡くんの喧嘩シーン。
円 「再リテイク」
平岡「はぁ?再リ?勘弁して下さいよ、円さんリテイク乱発して自分の首絞めてるってわかってます?こんな言い方降りられますよ」
円 「降りて結構、むしろ降りてくれよ」
平岡「はぁ?」
円 「降ろせって言ったんだよ。こいつ使えねーわ」
平岡「それどういう意味すか?」
円 「 お前がドヤ顔で連れてきたアニメーターな、 全員丸々使えねーんだよ!どいつこいつも落書きよこしやがって 」
先ほどの矢野さんの説教がそのまま現実になったようなシーン。喧嘩中の興奮したセリフというものありますが「どいつもこいつも落書きよこしやがって」はなかなかに辛辣です。(なんか円さんのセリフに意外にきついの多いですね?)
第22話「ノアは下着です」で宮森が瀬川さんに平岡を下げない代わりの条件を語るシーン。
宮森 「瀬川さんがないと判断した原画マンは入れません!無茶なお願いは絶対しません」
どのシーンでも、 能力がない人間に対して、明確に「一緒に働けない」と言い切る非情さ が表れていました。
仕事は怖い
劇中ではこの 非情さ に恐怖しているシーンも描かれています。第7話「ネコでリテイク」のワンシーン。
エマ「でも、私丁寧に書いてたら、時間がいくらあっても足りない。このままじゃいつまでたってもスピードが上がらない。技術も上がらない。どっちつかずの使えないアニメーターになって、 食べていけない 。」
:
エマ「プロなんだもん、一生懸命やればいいってわけじゃない」
仕事のできない人間は食べていけない。怖いけど当たり前の話なんですよね。
社会人1年目、2年目や社会人になる前は似たようなことを自分も考えていた記憶がありますし、今でもその恐怖が消え去るほどの自信は持ててません。
杉江 茂
非情さと信頼関係 を語る上で杉江さんは外すことができません。
序盤の杉江さんは(先ほどもあげましたが)
本田「杉江さんは?」
円 「萌えアニメなんてかけるわけねぇじゃん。ありえねぇってあの人。無理!」
などと言われていたり、他のアニメーターからも
エマ「杉江さんは?」
作画「無理でしょう。作監死んじゃうよ」
作画「30年前ならともかく、いまの絵は無理なんじゃ」
作画「書く気もないだろうしなぁ」
と非難轟々。まったくと言っていいほど 信頼関係 を築けていません。
そして、上の会話からもわかるように その機会すら与えられていません 。
物語序盤の杉江さんは、ほとんどのセリフが「おはよう」と「お先」だけで、それもすごくゆっくり話す話し方で老人さがにじみ出ており印象的でした。
あの有名な菅野監督に天才と言わしめるほどの実力を持っていながら、信頼関係を築けず老取れ扱い。
そんな杉江さんにも主人公みやもりによって、ようやく信頼関係を築き直す機会が与えられます。
みやもり「ムサニならかける人がいるとおっしゃってました!」
:(菅野監督との回想)
菅野 「杉江さんは天才」
:(ムサニに戻る)
タロー 「まじか!?」
本田 「それ本当!?」
みやもり「なので、杉江さんにお願いしたらどうでしょうか?」
そこからの杉江さんは圧倒的な天才っぷりを見せつけることで、一発で信頼関係を回復することに成功します。杉江さんは天才。
その後は話し方も幾分か、少し早口にそれも楽しそうな表情が目立つような印象になったなぁと感じました。
能力があっても機会が与えらずに信頼関係を築けない。
(劇中では語られてませんが、自分から 最近の絵や萌えもの に対しての拒否をしたことがあって信頼関係を失った過去などあったのかもしれませんね。)
そんな中、偶然かもしれないですが、みやもりに何年ぶりか何十年ぶりかのチャンスをもらうことができた。
そのあとのひと段落した時に、杉江さんがみやもりに感謝の言葉を言うシーンには得も言えぬ重みを感じ、涙なしには見られませんでした。
杉江 「それより、 ありがとう 。みやもりさん」
みやもり「え?」
杉江 「 みやもりさんが仕事を振ってくれなければ、僕はムサニのお荷物で終わるところだった。 」
みやもり「お荷物だなんて!とんでもないです!」
杉江 「今風の絵がかけないだなんて言って孤高の職人を気取ってたんだねぇ。自分にもまだやれることがあるんだとわかって、とても嬉しいんだよ。 ありがとう 。」
セリフを書き出してみて知ったんですが、二回もありがとうと言ってるんですね。
まとめ
まとめます。SHIROBAKOでは
- 能力のない人間とは働けない
- 能力があっても信頼関係を築けないと仕事がこない
- 信頼関係を築くにはその機会がないといけないが、そもそも信頼関係を築けてない人には機会がこない
と、非情なくらいの仕事のリアルが描かれていました。
改めて、全身全霊で技術力向上を心がけつつ、そしてチャンスには最大限のパフォーマンスが出せるよう に頑張っていこうと初心に帰る思いになりました。
それでは、良いクリスマスを。