アナログ金木犀

つれづれなるまままにつれづれする

SHIROBAKOで語られる親と子供の話

こんにちは。 有象無象( @kgmyshin) です。

この記事は SHIROBAKO Advent Calendar 2016 二日目の記事です。

先日は konifar さんの フリーランスアニメーター瀬川美里 という素晴らしい記事でした。その ということでとてもプレッシャーですが、瀬川さんに詰められ顔を引きつらせながらもがんばる遠藤さんさながら記事を書いてみたいと思います。やっぱりブログにはケレン味が重要だと思うんですよね。

さて、SHIROBAKOにはちゃんと一つの主題があるのですが、それ以外にもいろんなキャラクターたちやそれぞれの関係性から生まれるいろんな副主題がマルチスレッドでたくさん展開されていきます。 今回はその中でも 親子関係 に焦点を当てているシーンを抜粋して紹介していきたいと思います。

宮森親子

第4話「私ゃ失敗こいちまってさ」、宮森あおいと宮森母との電話でのシーン。

母   「あぁ、やっと繋がった。みたよ!エソクダス!」

あおい 「エクソダス!うちの方じゃやってないでしょ?」

母   「お父さん、ケーブルテレビ入ったから。最後に あおいの名前 がでてきたよ。」

あおい 「ん?うん。」

母   「宮森あおいって。」

あおい 「うん(照れながら)。」

母   「お母さん、 そこだけ何度も見た !」

あおい 「そこだけ〜(笑)」

母の「 そこだけ何度も見た 」というセリフに心が洗われます。そして少し照れている、劇中のいつもと違う、ただの一人の〈娘〉となってる宮森がすごく印象的でした。

自分は子供はいないので親にとって、これがどれだけの感動なのか実感したことはありません。 ですが、友達が苦労の末に活躍している姿をみて心を動かされたことは何度もあって、それが自分の子供となるとやはりその何倍、何十倍くらいの感動なのでしょうか。

母と父が "宮森あおい" という文字がエンドロールで流れてるのを嬉し泣きしながら何度も何度も見てるというのを想像してしまって、涙なしには見られないシーンでした。

矢野親子

第11話「原画売りの少女」の一幕。

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急に矢野さんが放心状態に。普段の気が強くて仕事もばりばりこなす矢野さんとは対照的な意外な脆さが垣間見えたシーンでした。

監督 「矢野ってさぁ、父一人子一人なんだよなぁ」

唯一の家族である父親が容態が良くないという、他の親子関係のシーンとは比べて少し重い内容でした。

その後は容態が落ち着いたのか、明るい声で宮森に電話をしてきたり、戻ってきてからはしっかり仕事をこなすいつもの矢野さんでした。 ただ、杉江さんの活躍の話を聞いた時に

矢野 「杉江さんって、うちの父親よりちょうど一回りうえなんだよね」

宮森 「へぇ」

矢野 「だから、父親にもまだまだ頑張ってもらわないと!さて!仕事溜まってるぞ!」

と、すぐに父親に話題が結びつくくらい、本当に家族思いなんだなぁと涙なしには見られないシーンでした。

佐倉親子

第3話「総集編はもういやだ」の一幕。

息子 「パパさん 〜」

佐倉 「お?どうした?おしっこか?」

シーンが切り替わって

山田 「おしっこもれちゃうぅぅううう」

小さな少年が「パパ」ではなくあえて「パパさん」と呼んでいる愛くるしさを感じていたら、急におじさんのおしっこ漏れちゃうという叫びを聞かされるという涙なしには見られないシーンでした。

安原親子

最後はやっぱりいちばん好きなエマで締めたいと思います。

第22話 「ノアは下着です。」のワンシーン。

母  「届いたよ湯のみ、いいの?あんな高そうなものを?」

エマ 「いいの。結婚記念日おめでとう。これまで何もしないでごめんね。」

母  「ありがとう。お父さんと二人で大事に使わせてもらうね。あ、もう会社に行く時間だね。夜だとエマいつ仕事がおわるかわからないから、朝電話したの。ごめんね、切るね。」

エマ 「あのね!お母さん。 私、アニメーターで食べていけると思う 。だからもう、心配しないで。」

母も娘も気を遣い合って、遠くからも母がしっかり娘を見守ってるんだなぁということが伝わってきます。そして、エマがついに自信を持ち、親に 「 食べていける 」と宣言しています。

実はこの宣言、エマにとってすごく重要なことだったりします。というのも、第一話のエマが女子高生の時のシーンを思い出してみましょう。

エマ 「 1年だけ仕送りしてくれるって。でもその間にちゃんと生活できるようになれって。

みぃ 「ハンストとかやったんですか?無視とか無言とか家庭内暴力とか?」

エマ 「手紙、毎日。口だとだめだから。」

エマにとって「食べていけるようになる」というのは、父親との期限付きの約束だったんですね。そして、先ほどの「食べていける」宣言をした時の エマは社会人4年目 (宮森が短大を卒業したあとに入社して2年目で活躍している時なので)。つまり、初めの約束の1年は過ぎてしまっているんですね。そのあとにも仕送りがあったかどうかは劇中では触れられてませんが、母親の心配ぶりだったりを考えるといろいろあったのだろうと想像できます。

このことを踏まえて改めて始めから見直すとエクソダスの時期の エマの焦り の裏側もより理解できて一層がんばれ!って思えるので見返すことをお勧めします。

ちなみに漫画では、父親とのやりとりがもう少し詳しく描かれています。

さて、エマが「食べていける」と宣言した理由について。作画監督を決意したというのも一つあると思いますが、先ほどの母との電話の一つ前のこのシーン。

杉江 「僕にも見せてくれる?」

エマ 「はい」

エマ 「なにか変ですか?」

杉江 「いや。これはぁ、僕には書けないなぁ。 安原さんにしか書けない絵だ 。いいね。」

エマ 「ありがとうございます!」

伝説の原画マンに腕を認められたというのが、「食べていける」という自信につながった一番大きな理由なのではないかなと思いました。

たった一つのセリフ「私、アニメーターで食べていけると思う」に、何年越しの感情が込められたいろんな背景が見えてくる、涙なしには見られないシーンでした。